親族が日本からアメリカに移住した、アメリカに住んでいるときに家を買った、など二カ国間に財産がまたがることは今の世の中普通にあること。ただ、これが実際に相続される段階になると、税金問題も会って、複雑になる。私が日頃相続のご相談を受けて感じたことを簡単にまとめてみようと思う。
1. 日本とアメリカの相続は分けた方がいい
アメリカと日本では夫婦間に適用される法律、財産に課される税金、遺書や信託に関する有効性や手続きも違う。アメリカでは一般的な夫婦が共同で管理するジョイントバンク口座というものがあるが、これは日本の銀行には存在しない。ジョイントバンク口座は通常は(right of survivorship)となっているため、片方が亡くなった場合には、銀行の預金は生存者の帰属となるため、これはProbate=相続法に基づいて裁判所で行われる手続きの対象にはならない。一方で、日本にはジョイントバンク口座というものは存在せず、亡くなられた方の銀行口座にある現金は、被相続人の財産として相続の分割対象となる。
また、アメリカの不動産は、その所在地の州法が管轄法となって適用される。日本に居住する方が、日本の遺言で日本の財産と一緒にアメリカ不動産を処分しようとしても、州法上の要件を満たさず、無効または紛争の原因となる可能性がある。逆もあり得る。また、カリフォルニア州は、夫婦間に適用される法律はCommunity Property Lawという、アメリカで9州しか採用していない法律が適用される。この法律では夫婦の財産は基本共同で作ってきたもの、だから財産分与でも限りなく夫婦平等であり、その基本原則をベースに、結婚後の行動や財産をどう築いたか、ということで例外、またその例外が先例として作られている。普通の家族法とは大きく異なるし、知らない人にとっては(私も初めて勉強した時は、はてなマーク10個あっても足りないくらい意味がわからない法律だった)意味不明の法律が、夫婦の片方が亡くなったときに、その財産に適用されるので、相続がさらに複雑になる。
日本の財産は日本の遺言で、アメリカの財産はアメリカの遺言または信託で分けて設計することが、最も安全で合理的な国際相続対策であると言える。
2. Probate Courtでの手続き
アメリカのほとんどの州では、亡くなられた方が持っていた財産に関して、遺言がない、信託も形成していない場合には、被相続人の財産分割のためにProbate (※アメリカで遺産処理を裁判所が監督する制度)」という手続きが裁判所で行われる事になる。州を跨いで財産を持っていた場合には、州ごとの手続きとなり、相続人が国外財樹だったり、携わっている弁護士の力量によって、手続きにも差が出てくるので、手続き終了までに2-3年かかることも稀ではない。クライアントが、ご両親から譲り受けたUSの不動産を手放そうとしたら、この相続の手続きが済んでいなかったため、手続きが終わるまで手放すことができないので、泣く泣く維持費を払っている例もある。州の方式にあった遺言か、信託財産にして、Probateの手続きは避けておくのが賢明である。
3. アメリカではCheckがまだ使われている
多くのことが経験するまで気が付かないと思うのだが、アメリカでは今も小切手が多く流通していて、現金振込よりCheck=小切手を郵送することが一般的に行われている。相続手続も同様で、相続財産が小切手で送られてくることが普通だ。一方、日本では現在、小切手を換金してくれる銀行はゼロ、である。つまり、小切手が送られてきても、日本では換金できず、何の価値も持たないのである。これを現金の銀行振り込みに変えるためには、裁判所へ変更依頼=Petitionを提出して認めてもらう必要がある。私自身も、相手方の弁護士が半ば強引に海外送金ではなくチェックで処理されたことで、想定以上に時間と手間がかかった経験がある。こうした実務上の違いは、事前に知っているかどうかで、相続人の負担が大きく変わってくる。
4. まとめ
上記に書いたことはまだごく一部の例であって、日米の相続、分割の違いを書こうとしたら、一冊の本になりそうだ。個別のご相談については、当職まで問い合わせフォームでご連絡ください。