米国ビザ・移民制度の最新動向 – 留学生・駐在員・企業が知っておくべきポイント[2026年10月]

米国移民制度は、2026年、学生ビザ・就労ビザの両面で大きな変更が相次いでいる。ただし、その多くは、「提案段階」か「裁判所で差し止め中」で、まだ発効していないものが多い。本ブログでは、2026年10月20日時点での主な動きを整理し、日本からの留学生・駐在員・企業の方たちが注意すべき点をまとめた。状況は日々変わるので、実際の手続きの前には必ず最新情報を確認していただきたい。

この案はまだ提案段階で、現在の60日間の猶予は有効。ただし確定すれば、E-2駐在員を初め、米国で就労ビザで働くすべての方に直接影響を与えるものとなる。

「60日間の猶予期間とは」

就労ビザは「その会社で働くこと」が根拠なので、退職や解雇で仕事がなくなると、ビザの期限が残っていても、滞在の根拠を失って帰国しなければならなくなる。これを救済するため、2017年より「最大60日間」はアメリカの合法的に滞在できるようになっていた。この60日という猶予期間内に、次の勤務先を探す、別のビザに切り替える、帰国の準備をするというようなことが今まではできていたのである。

どう変わるのか

国土安全保障省(DHS)は2026年9月11日、この60日間の猶予期間を廃止する規制案を公表した。確定すると、仕事が終わった翌日から、理論的には在留資格を失った状態になるので、他の滞在の許可がなければすぐに出国する必要が出てくる。対象となるのは、E-1, E-2, H-1B, L-1, O-1, E-3, H-1B1, TN対象国の国籍者。また、この扱いは、配偶者や子供などの帯同家族も同じ扱いになる。なお、ビザの有効期限が切れた後の最大10日間の猶予期間 (E, H-1B, L-1, TNのみ)はこの案が実施されても残ることになる。

今後のスケジュール

パブリックコメントの締切は2026年11月10日。その後DHSが最終規制を出すかどうか判断するが、時期は未定。

今から準備すべきこと– 時間的余裕がほとんどなくなる

・企業の人事担当者- 社員の退職や人員整理を決める前に、移民法弁護士に相談。後任のビザ申請や本人の資格変更を、退職日より前に準備しておくことが重要

・ビザ保有者- 退職後に仕事をしないままビザを待つ余裕がなくなるので、転職を考えている場合には、今の会社を辞めるタイミングと、新しいしい会社でのビザ申請のタイミングを人事担当と相談してほしい

・ご家族- 帯同家族のビザは就労ビザ保持者の資格に連動するため、家族全員の予定も合わせて確認が必要になる

規則の内容

国土安全保障省(DHS)は2026年7月17日、F(学生)、J(交流訪問者)、I(報道関係者)の在留期間について、従来の「Duration of Status」を固定期間制に変える最終規則(発効予定9月15日)を公表した。主な内容は以下のとおり。

・F、Jの在留期間は I-20/DS-2019のプログラム終了日までの固定期間とする(最長4年。これに出国準備期間として30日が加わる)

・Iの在留期間は240日または任務に必要な期間のいずれか短い方とする(中国旅券保持者は原則90日。香港・マカオ旅券は除く)

・期間を超えて滞在するには、USCISへの延長申請(Form I-539)又は一旦出国して再入国することが必要

・F1の課程終了後の猶予期間を60日から30日に短縮

・転校、専攻変更、追加の学位取得などにも新たな制限が加わる

施行直前に全米で差し止め

施行前日の2026年9月14日、マサチューセッツ州連邦地裁は、行政手続法(APA)第705条に基づき規則の効力発生日を延期した。あわせて、DHSと移民・関税執行局(ICE)が規制を実施することを全米で差し止める予備的差止命令(preliminary injunction)を出した。裁判所は、DHSが規則のコストや代替案、重要なパブリックコメントを十分に検討しておらず、行政手続法(APA)違反の可能性が高いとした。これは最終判決ではない。政府は9月30日に第一巡回区控訴裁判所へ控訴しており、今後の訴訟の展開によっては規則が施行される可能性もある。

実務上のポイント

現在もF・J・I ホルダーの方はD/Sで入国・滞在できる。一時出国して再入国した際には、CBPが発行するI-94の記載が「D/S」になっているか、固定日付かを必ず確認していただきたい。

DHSは2026年10月8日、F-1学生のOPT(Optional Practical Training)に高額の手数料を課す規則案を公表。

・金額:初回のOPT推薦で7万ドル、2回目以降のOPT推薦(STEM OPT延長を含む)で1回あたり3万ドルとしている。卒業後のOPTに続けてSTEM OPT延長を使う場合は、合計10万ドルとなる。

・支払う人:支払うのは学生ではなくSEVP認定校(大学など)である。ただし、大学が学生や雇用主に費用を転嫁することも想定されている。

・学位ごとの再徴収:学士から修士へ進むなど、課程レベルが上がるたびに7万ドルを再び課すことについても、DHSは意見を募集している。

・注意点:施行日以降に新たな推薦を受ける場合は、手数料の対象となる。例えば、既にOPT中の学生が施行後にSTEM OPT延長の推薦を受けると、初回手数料を払っていないため、3万ドルではなく7万ドルの対象となり得る。

・申請費用:USCISへの通常のOPT申請費用(Form I-765。現在はオンライン470ドル、紙申請520ドル)は別途必要。

パブリックコメントの締切は2026年11月9日。大学・大学院は海外から留学生から大きな恩恵を受けているので、学校側の反対は強い。留学生の減少も報じられている。規則が確定した場合には、訴訟になる可能性が高いと見られている。

2025年9月の大統領布告により、主に米国外にいる人のための新規H-1B申請に10万ドルの支払いが必要とされていた。その後の経緯は以下の通り。

・2026年6月8日:マサチューセッツ州連邦地裁が、この支払いを実施する行政機関の方針を違法と判断し、取り消した。

・2026年7月24日:第一巡回区控訴裁判所が、控訴中の効力停止を求める政府の申立てを退けた。

・2026年9月18日:新たな布告で、支払い義務が2027年9月に延長された。

・2026年9月30日:カリフォルニア州北部地区連邦地裁が予備的差し止め命令を出した。延長分を含む両方の布告について、実施のための行政機関の方針を取り消し、通常の規則制定手続が終わるまでの執行を禁じた。

よって、雇用主は現状10万ドルを支払う必要はない。ただし、控訴審の結果次第で状況がかわる可能性がある。なお、これとは別にDHSは2026年8月25日、抽選対象(cap対象)のH-1B申請全てに103,265ドルの手数料を課す規則案を公表した。米国の修士号以上の枠も対象で、他の手数料とは別に必要となる。現時点では未施行である。

その他のH-1B関連の動き

・抽選方式の変更:2026年2月から、抽選が無作為方式から賃金に基づく加重方式に変更されている(施行済み)。

・Prior deference廃止案:2026年10月、延長審査などで過去の承認を尊重する規定を廃止する規則案が公表された(コメント締切は11月13日)。対象はForm I-129による申請全般で、H-1Bに限らない。E、L、Oの延長も含まれる。

・レイオフ企業への審査強化:9月の大統領令により、過去1年以内に同種の米国人労働者をレイオフした企業や、今後レイオフを予定している企業は、H-1B申請の審査でその点を考慮されることになった

一定のカテゴリーではEADの更新申請を期限内に出せば、審査中でも就労許可とEADの有効期間が最長540日間、自動的に延長される仕組みがあった。2025年10月30日の暫定最終規則により、同日以降に提出された更新申請には、この自動延長が適用されなくなった。2026年10月14日の最終規則では、この暫定最終規則を変更なく確定させる最終規則が公表され、同日に発効された。

施行で影響を受ける人

・EADで就労しているH-4配偶者

・米国内で永住資格への調整申請(I-485)をし、その申請に基づくEADで働いている人

・庇護申請者、難民・庇護認定者、TPS(一時保護資格)保持者など

更新申請自体は引き続き可能であるが、申請を出していても、現在の就労許可が切れるまでに更新が承認されなければ、別の就労根拠がない限り仕事を中断しなければならなくなる。なお、2025年10月30日より前に提出された適格な更新申請に基づく自動延長や、法律・官報告示による例外(一部のTPS関連など)は残っている。E, Lの配偶者は、就労許可が在留資格そのものに付随するため、今回の変更の影響は受けない。

STEM OPTは別

ここで混同しやすいのが、F-1学生のSTEM OPTである。対象となるSTEM分野の学位を取得し、その他の要件を満たす学生が申請できる「24ヶ月のSTEM OPT延長」は、今回の廃止とは関係がない。また、STEM OPT申請を期限内に適切に申請した場合、現在のOPTが満了しても、申請審査中は最大180日間、またはUSCISが判断を下すまでのいずれか短い期間、就労を継続できる仕組みが別途存在する。今回の変更は、このSTEM OPTの延長制度ではなく、一定のEAD更新申請に認められていた「審査待ちの最大540日間の自動延長」に関するものである。

ESTA

米国税関・国境警備局(CBP)は2025年12月、ESTA申請で過去5年分のSNSアカウントの申告を必須にする方針を公表した。合わせて、過去のメールアドレスや電話番号、家族の情報、顔写真(セルフィー)の提出なども提案されている。ただ、2026年10月時点でこの義務化の正式な施行は確認できず、現在のESTA申請では、SNS記入欄は2016年から設けられている「任意」項目のままとされている。一方で、入国審査の際にCBP職員がSNSについて質問する権限は既にあるものとされている(よって、油断はしないほうがいい)。

在外公館でのビザ申請

国務省は、2026年10月1日から、I (報道関係者)、TN・TD(USMCA専門職とその扶養家族)のビザ申請者にもオンライン活動歴の審査を拡大し、全てのSNSを「公開」設定にするよう求めている。これまでに審査の対象となっていたのは、次のカテゴリーである。これまでに審査の対象となっていたのは、次のカテゴリーである。

  • F、M、J
  • H-1B、H-3とその帯同家族(H-4)
  • K、Q、R、S、T、U
  • A-3、C-3(家事使用人)、G-5

E-1/E-2、L、O、B-1/B-2は、現時点でこのリストに含まれていない。ただし、ビザの種類にかかわらず、ビザ申請書(DS-160)では過去5年間に使用したSNSアカウントの記載が全ての申請者に求められている。審査基準は公表されておらず、不利と受け取られる情報は追加審査・遅延・拒否につながり得るので、注意が必要。

上記のとおり、多くの制度変更は訴訟中または提案段階であり、今後数週間から数ヶ月で状況が変わる可能性がある。また、本ブログは、作者が2026年10月20日時点で得られた情報に基づく一般的かつ個人的な情報提供であって、個別の法的助言をなすものではありません。

当事務所では、日米両国の資格を持つ弁護士・行政書士が米国ビザ・日本の在留資格の双方についてご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。

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